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C型肝炎に対する治療

更新日:2022年3月29日

 非加熱凝固因子製剤によりHIVに感染した血液凝固異常症(血友病及び類縁疾患)の患者さんの多くが、C型肝炎ウィルス(HCV)にも重複感染しています。

 HIVとHCVが重複して感染すると、HCV単独感染の場合よりも早く肝臓の障害が進行することが分かっています。肝臓の障害は自覚症状が乏しいことが多いため、ご本人が知らない間に重篤な状態に陥ることがあります。幸いC型肝炎の治療は近年劇的に進歩しており、2015年以降インターフェロンを含まない新しい抗HCV薬療法により、かなり高い確率でHCVを排除することが可能となっています。しかし、治療によりHCVを排除出来た場合でも、十分な肝機能の回復が得られなかったり、そのあとに発癌が生じたりする可能性があり、定期的な経過観察は極めて重要です。

肝検診

 ACC救済医療室では、治療検診の枠組みの中で患者さんの肝臓の状態を検査し、消化器内科医と共に的確な治療法のご提案を行っています。遠方の方または検査内容によっては、入院や複数回来院していただく場合もあります。

肝移植相談窓口

 腎不全などの基礎疾患、肝臓の状態、HCVの薬剤耐性など様々な要因により、新しい治療薬を使用することが適切でない場合があります。肝不全に至った場合の治療の選択肢として、肝移植があります。かつて日本では生体肝移植(生きた方から肝臓の一部の提供を受ける)が主流でしたが、 脳死肝移植(脳死状態となった善意の第三者から肝臓の提供を受ける)の累積件数も徐々に増加しています。

 強力な抗HIV療法が行えるようになる前の時代、HIV感染者に対する臓器移植は禁忌(治療成績が悪いため行うべきではない)とされていました。しかし現在では、HIV感染症が良好にコントロールされている場合には、必ずしも禁忌とは考えられていません。日本でも、血友病薬害被害者に対する肝移植が2001年以降これまで10件以上行われています。

 肝移植が選択肢となるかどうかの判断には、肝臓の状態以外に、全身状態が肝移植に耐えられるか、移植後にHIV感染症やC型肝炎をきちんとコントロールできる見込みがあるかなど、様々な観点からの検討が必要です。生体肝移植の場合には、肝臓(の一部)の提供を希望する方の安全も最優先事項です。手術を成功させるためには、移植外科医と血友病の専門家との緊密な連携が欠かせません。
肝移植は大手術であり、また術後は免疫抑制剤内服を継続しなければならないなど、必ずしもすべての患者さんにとって最善の治療となるわけではありません。しかし、条件を満たす場合には有力な選択肢のひとつとなる可能性があります。ご相談を希望の患者さんは、担当医を通じて肝移植相談窓口あてにご連絡ください。

「血液製剤によるHIV/HCV 重複感染患者の肝移植に関する研究」班

研究代表:長崎大学大学院 移植・消化器外科 江口 晋教授

 薬害HIV感染血友病等患者さんの多くが、HIVのみならずHCVにも重複感染していることが以前より報告されています。救済医療室では、長崎大学大学院 移植・消化器外科教授の江口 晋先生が研究代表を務める「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究」班の協力を得て、肝移植相談窓口を設置し、医療関係者から移植に関するご相談を受け付けています。

 肝移植を検討されている医療者の皆様におかれましては、肝移植についての情報、評価などをご希望の際には下記メールアドレス宛に医療情報と共にご一報ください。基本的にメールでのご相談を承っています。

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迷惑メール防止のため、お手数ですがメールアドレスは手入力をお願いいたします。
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血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植を含めた外科治療に関する研究班

 令和3年度より新たに開始された「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植を含めた外科治療に関する研究」班では、全国のHIV/HCV重複感染患者さんに対する肝移植の適応評価、脳死肝移植登録、脳死ランクアップポイントの妥当性検証、肝移植手術の支援、肝移植ガイドラインの改訂を計画しています。また、昨年からのコロナ禍で患者さんの受診頻度が低下していることを踏まえ、各ブロック拠点病院との連携・オンライン面談の推進に尽力されています。

 肝臓の硬さはAST、ALT、血小板数、年齢より算出されます。数値の高い方は肝臓が硬く、肝硬変である可能性があります。同研究班では、肝臓の硬さの判別式(FIB-4)を用いて、患者さんがご自分で肝臓の硬さをチェックできるウェブサイト(名称:FIB-4 index計算サイト)を運営されています。

血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者さんへのFIB-4 indexのご案内

FIB-4 indexのご案内(PDF:1,794KB)


血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者さんへのFIB-4 index 計算サイト

FIB-4 index計算サイト


 近年、患者さんの高齢化に伴い、悪性腫瘍の頻度が増加してきています。血液製剤によってHIV/HCVに重複感染した患者さんは、非感染者に比べて抗腫瘍免疫が十分に働かないことが想定され、治療後の成績は非感染者より悪くなっています。また実際の治療においても、血友病が存在するために積極的な治療が控えられたり、手術の際に切除範囲が狭められたりすることが報告されています。
 「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植を含めた外科治療に関する研究」班では、患者さんが抱える外科的疾患に関する診察・治療ガイドラインの作成を予定しています。

肝細胞癌に対する重粒子線治療に関する相談窓口

 肝細胞癌に対しては標準治療が第一選択となりますが、病状により標準治療が困難な場合は重粒子線治療が選択肢として検討できる場合があります。

 重粒子線治療は放射線治療の一種です。体への負担が少ないため、高齢の方や持病がある方でも治療の対象となりますが、すべての病状に対して行える治療法ではなく、適応については専門医による総合的な判断を必要とします。

 救済医療室では、薬害HIV感染患者に対する肝細胞癌に対する重粒子線治療の臨床研究を行っている群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学センターに治療の適応相談や治療にご協力頂いております。治療は群馬大学重粒子線医学センターにて行い、初診、準備入院、治療入院と原則3回の通院が必要です。また、救済医療室では治療までの各種手配、費用や支援に関する相談も承っております。重粒子線治療の検討をご希望の患者さんは、担当医を通じて救済医療室(電話直通:03-6228-0529)にご連絡ください。

群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学センター

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