C型肝炎に対する治療(肝検診・肝移植相談)
2018年8月13日
非加熱凝固因子製剤によりHIVに感染した血液凝固異常症(血友病および類縁疾患)の患者さんの多くが、C型肝炎ウイルス(HCV)にも重複感染しています。
HIVとHCVが重複して感染すると、HCV単独感染の場合よりも早く肝臓の障害が進行することがわかっています。肝臓の障害は、自覚症状に乏しいことが多いため、ご本人が知らない間に重篤な状態に陥ることがあります。
幸いC型肝炎の治療は近年劇的に進歩しており、2015年以降、インターフェロンを含まない新しい抗HCV薬の併用療法により、かなり高い確率でHCVを排除することが可能となっています。
しかし、治療によりHCVを排除できた場合でも、十分な肝機能の回復が得られなかったり、その後に発癌が生じたりする可能性があり、定期的な経過観察は極めて重要です。
肝検診
救済医療室では、それぞれの患者さんの肝臓の状態を検査し、消化器内科医とともに的確な治療法のご提案を行っております。遠方あるいは希望の方には、入院による精査も行っています。
肝臓移植相談窓口
腎不全などの基礎疾患、肝臓の状態、HCVの薬剤耐性など様々な要因により、新しい治療薬を使用することが適切でない場合があります。肝不全に至った場合の治療の選択肢として、肝移植があります。かつて日本では生体肝移植(生きた方から肝臓の一部の提供を受ける)が主流でしたが、 脳死肝移植(脳死状態となった善意の第三者から肝臓の提供を受ける)の累積件数も徐々に増加しています。
強力な抗HIV療法が行えるようになる前の時代、HIV感染者に対する臓器移植は禁忌(治療成績が悪いため行うべきではない)とされていました。しかし現在では、HIV感染症が良好にコントロールされている場合には、必ずしも禁忌とは考えられていません。日本でも、血友病薬害被害者に対する肝移植が2001年以降これまで10件以上行われています。
肝移植が選択肢となるかどうかの判断には、肝臓の状態以外に、全身状態が肝移植に耐えられるか、移植後にHIV感染症やC型肝炎をきちんとコントロールできる見込みがあるかなど、様々な観点からの検討が必要です。生体肝移植の場合には、肝臓(の一部)の提供を希望する方の安全も最優先事項です。手術を成功させるためには、移植外科医と血友病の専門家との緊密な連携が欠かせません。
肝移植は大手術であり、また術後は免疫抑制剤内服を継続しなければならないなど、必ずしもすべての患者さんにとって最善の治療となるわけではありません。しかし、条件を満たす場合には有力な選択肢のひとつとなる可能性があります。ご相談をご希望の場合は、担当医を通じて肝移植相談窓口あてにお知らせください。